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小児科外来での出来事(その4)

 抗生物質は、ウイルスには、無効です。しかし、風邪(の9割近くは、ウイルスですが)に、多くの例で、抗生剤が使われています。それも、重症化を防ぐ為や細菌の二次感染を防ぐ為に。しかし、この2つ、はっきりとその効果が証明されていないのですが・・・。
 6月2日の朝日新聞には、以下の様な記事が載っていました。
 今年2月、無作為に選んだ全国1490カ所の診療所に郵送でアンケートをして、269カ所から有効回答を得た。ウイルス性の普通の風邪「感冒」と診断した患者やその家族が抗菌薬を希望した場合、「希望通り処方する」が12・7%、「説明しても納得しなければ処方する」が50・4%で、計約6割を占めた。
 咳をするから咳止めを、鼻水が出るから鼻水止めをと、よく、親御さんから求められます。鎮咳剤や抗ヒスタミン剤で、その時は、少しはいいのでしょうが、長い目で見ると、 合併症を起こし易くしたり、治りを遅くしていることの方が多いと思うのですが・・・。
 検査を要求する人も多くなりました。いろいろ説明しても、納得しないで、検査を要求して来る例も、多くなっています。軽い下痢だけでも、ウイルス検査を求める人(しても、殆ど陰性ですが)、発疹が出ると、詳しいアレルギー検査を求める人、医師も、100%の診断までは出来ないので、することもありますが・・・。
 3歳児未満、定額の丸めだと、アレルギー検査を詳しくすると、医療側は、赤字になります。
 以下は、宮崎小児科医会がインターネットで、園・学校の先生方に、迅速検査で、お願いしているものです。
 迅速検査について、必要のない検査は行いません。【保育所、幼稚園、小・中学校の関係者の皆様へお願い】
 ある病気が流行した際に「検査をしてもらいなさい」との指示ではなく、「○○が流行しているので受診してください」と伝えてくださると助かります。
 子どもたちは様々な訴えや症状で私たちの医療機関を受診されますが、そんな中で「学校(園)の先生から検査を受けるようにと指示されたので受診した」という方がしばしば来院されます。子どもたちの病状を心配していただき、保護者に受診を勧めていただくことは大変にありがたいことですが、「検査をしてもらうように」という指示は、ときには「検査をしないと登校(園)ができない」という誤解を保護者に与えることがあります。また本来は検査の必要のない子どもが無理に受診し、かえって感染のリスクを増やすなど、残念な結果になることもあります。
 検査は、日常的な病気を診断するうえで、絶対に必要というものではありません。特に迅速診断検査は、100%正しい結果がでるものではなく、偽陰性(本当はその病気なのに検査で違うとでること)や偽陽性(本当はその病気と違うのに検査ではその病気だとでること)を示すことがあります。例えばインフルエンザの場合でも、検査結果の如何にかかわらず、周囲の流行状況や発熱からの経過、臨床症状から総合的に判断しています。
 また、RSウイルス迅速検査は外来では1歳未満の乳児のみ、ノロウイルス検査は小児では3歳未満の方のみが健康保険での検査が認められています。それ以外の方は自費の検査となりますので、それでも検査を希望された場合、診察料も含め誰が費用を負担するのかという問題も出てきます。周囲への感染性のリスクは検査結果ではなく、臨床症状から判断されます。
 そもそも検査をするかしないかは、医学的な根拠のもとに医師が判断し、家族と合意した時に実施するものです。保護者には、信頼している園や学校などの先生からの「検査指示」には特別な意味がありますが、実は、医療現場を混乱させていることにご留意ください。「検査は医師と相談し、必要があれば受けてください」と言っていただけると、大変ありがたく思います。