日本の心・さいき

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将来の医療アラカルト(医療訴訟:8/10)


 医師不足の科を加速しているものに、医療訴訟がある。現在、産科に関しては、その救済策が取られる様になったが、他の科に関しても、出来るだけ早急に、そうなって欲しいと願う。
 訴訟を恐れていたら、医療が積極的に出来なくなる(特に、救急医療や重症例)。地方の病院に行くと、医師の数が少ないので、当直でのしばりがしばしば来る。多い先生だと、1週間に2回近く。専門でない患者さんも来る。発熱や腹痛だけでない。救急車で来る。ケガ、事故、骨折、動悸、更には、薬の副作用で来院したり、死亡の検案なども。専門外なので、初めての症例も当然ある。その場で、適切な判断をしないと命取りになることもある。(当直明けも、睡眠不足状態でも、日本の多くの医師は、普通に働いている・・・パイロットの様に、法律でしっかりと休む義務を設けてくれると、ありがたいのだが・・・医師不足の状態では、そんなこと当分出来っこない!)
 冷静に考えたら分かることだが、初めから、和尚さんはいない。初めは、研修医で、まだ、経験不足。次第に経験を積み、次第に腕を上げる。しかし、自分の様に、(延べ100万人近く診ていても)60歳過ぎて、初めての病名の症例にぶつかることもあるし、同じ病名でも、特殊な経過を経験することもある(←当たり前)。
 小児科の場合、急患が多くて、忙しい。喘息もクループも熱も、多くの人が寝入っている真夜中が正念場だ。深夜一生懸命にしても、結果が思わぬ方向に行ってしまうと、親御さんから叱責されないまでも、不満な顔をされることが多い。(私自身)弁護士を通じて訴えられこともあった。
 医師に成り立ての頃は、良心的に一生懸命にしていれば、いつかは、患者さん側にも通じて、裁判を回避できると思っていただけに、その時の落ち込みは、想像以上であった。こんなに頑張って、その結果が裁判沙汰何て、やっていられないって感じになっていた。
 小児科では、裁判件数は、さほど多くないが、トラブルは日常茶飯事に起きていると思っている。小児科医が診ないと言うことだけで、救急外来で切れる感じの親御さんも現実にいる。他の科の先生が診て、紹介状を書いて紹介すると、最後に、「そんなら、初めから診るな!」って感じで言われるケースもある。医師はパーフェクトでないといけないと思われている。しかし、救急の場では、普段間違えないことが、間違えることがある。失敗は許されないことだが、人間だから、パーフェクトには出来ないし、それに、その時点では、どう経過するのか、予測が立たないことも多い。
 どう考えても、医学的にもその時の判断が難しく、不幸にして悪い結果になってしまって、裁判沙汰になると、医師のモチベーションも低くなるし、例え裁判で勝っても、それまでの心の痛手は、大きい。
 ある大学病院で、乳児肝炎を先天性胆道閉鎖と思って手術し、術後に癒着して、再び手術となった例・・・ある町立病院で、アレルギー性紫斑病の腹痛を急性虫垂炎の腹痛と思って手術し、その後、腎不全になってしまった例・・・肘内障だと思って整復したら、悪化した例(その時、レントゲンもしっかり撮っていたのだが、たまたま骨折の像が角度の関係で写っていなくて)。自分の周りには、そんな(難しい)いろんなケースがある。
 小児科医の資源は、限られている。聖職だから、深夜でも主治医は診て、頑張るのは当たり前だ、医師は高給もらっているから、いつでも診るのは当然だと思われているケースもある。受け持ち患児が病院で亡くなる時は、多くの小児科の主治医は、深夜でも、呼び出されることが多い(親御さんがどうしても納得しない。)。自分も、それが当たり前だと今まで教育されてきた。しかし、やはり、それはおかしいのではと思う様になってきている。(内科の場合は、病棟の患者さんが亡くなった場合、当直医が最後に診ているケースが多い様だが・・・)


http://www.youtube.com/watch?v=QiXijwnocDc&NR=1
http://blog.m3.com/syumi-syounikai/20060925/1
http://blog.goo.ne.jp/hardsix/e/aa47e8b6d1c5fa56dc77a421427ba54b