大学の入試では、決められた時間内に、その大学の過去の問題から、傾向を充分に把握しておいて、時間配分を上手に使って、出来る問題を落とさない様にして、他の受験生よりも出来ることで、合格となる。当然、出題者がどうなっているかで、問題の質がガラッと変わることがある。
資格試験でなく、選抜試験では、人間性とか、他者への思いやりとか、多様性への価値観とか、不確かなものへの挑戦とか、新しいものへの挑戦とか、自分らしさとか、そんなものは、二次的なものとなっている。
医学部に入学してからがもっと大変である。まず、その量の多さに驚く。それに、講義のスピードが早い。多くの秀才があっと言う間に、劣等生になってしまう。追試、再追試、留年、・・・精神的に追い詰められて、潰瘍になったり、鬱になっている人も出てくる?!
暗記モノが多く、試験の時に、一時的にでも頭に詰め込める能力が試される?基礎医学の解剖学、生理学、生化学、それに、分子生物学、発生学、免疫学、・・・どうしたらこの莫大な量をこなしていけるのか(こなしていけない。日進月歩なので、教科書が直ぐに古くなる。基礎的なことをしっかりと把握して、後は、雑誌で追っかけるしかないことに気が付く)。
医学部では、実習が実に多い。午前中は講義、午後は実習、夜はレポートを書くって感じの日が延々と続く。
医師国家試験が難しい(東大医学部を出ても、約1割が不合格の難しさで、大学入試と同じで、それなりに受験勉強をちゃんとしてないと、まず、合格は無理!?)。医師国家試験に合格しないで他の仕事を探すとなると、・・・やはり、合格するまで頑張るしかない!?
医学部に6年間いても、学生の身分では、医師法で、注射1本出来ない制度となっている(欧米の医学教育とは、全く違う旧態依然の教育方?!)。卒業しても、研修2年間は、医師免許証を持っているのに、処方さえ、上の人の監視の上でないと許されない(ケースが多い)。医学部の教育なんて、教える方も、無報酬で片手間にしていることが大部分。
医学部に入学して、ジワジワと現実を知ってくる。しかし、もう、後戻りはできない。医師になっても、給料の低さに驚く(薬を使って下さいと言っているMRの人の方が、給料がいい)。医療のきつさに驚く(当直明けにも普通通りに仕事をこなさないといけない)。医療界の制度のおかしさに驚く。学生時代の医学教育以上に、卒後教育のおかしさに驚く。コンピューター相手に書くことの何と多いことか(近年、益々)。それに、患者さんへの対応の難しさに驚く(日本人全体が、感謝の念を忘れている傾向にあるのかな?!)。
マスコミの医者叩きに驚き、卒後の医療の進歩に驚く。大学との関係、博士号の有無、忙しい中での学会参加、医師会員加入の是非、問題は、次から次へと来る。そして、婚活!?
医師が科を選ぶ場合、小児科や産科は、女性にはとても合っていると(私自身は思っている)。母親の気持ちになれるし、お産する人の気持にもなれるから。しかし、卒後まだ一人前でなくて、結婚・育児となると、仕事との間に挟まれて、大変な思いをすることとなる。半人前の状態のまま育児に専念して、その後、再びとなっても、初めからやり直しって感じにもなるかな?!
一人前の医者になっても問題は、山積している。医者の子育て一つとっても、悩んでしまう(深夜でも受け持ちの患者さんを起きて診るべきか、それとも、大切な家庭を大事にするべきか)。地方の病院勤務となれば、経験してない他の科の患者さんも、当直で診ないといけない。いつも他の医者に応援を頼むわけにもいかない。(田舎で、数少ない医者でしている場合は、高給をもらうことになり、そうだと、そこにいれば、深夜も診ない訳にいかないケースが多い?!)
(個人差がある為に)不確かな予想と判断の中で、(医療訴訟に怯えながら)、誰にも分かってもらえないと開き直りながらも、歳を確実にとって行く。
医師の自殺率は、普通の人の3倍もある(特に、人に悩みをあまり相談したがらない男性の場合は、女性の3倍)。
今からの医師に求められるのは、医師としての技量はもちろん、医師としての倫理観はもちろん、それに、「体力」と「鈍感力」かな。
今は、受験の真っただ中だが、小さい時から受験勉強漬けでは、それは、出来にくいかな。不景気で、今年は、看護系の受験生が全国的に多くなっている。医療って、患者さんの為にあるもの、そうですよね!