日本の心・さいき

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ある小児科医の独り言(その41)

 児玉知之氏の書かれた(「名医」のウソなる)本の中で、検査の際に生じるリスクの割合が書かれている。
 胃カメラでは2万〜2万5千件分の1の割合で胃穿孔、大腸カメラでは千〜1万件分の1の割合で腸穿孔、気管支鏡では1万件分の1の割合で死亡、心臓カテーテル検査では5000件分の1の割合で死亡とある。
 胃カメラや大腸カメラは、多くの施設で施行されている。どんな医者も、車の運転と同じで、初めは青葉マークで、皆、初心者に過ぎない。ベテランが付いていて、初めはそれなりにフォローしてもらえても、いつかは、1人で多くの責任が任されることとなる。一般的には、沢山症例をこなして、困った時には適切なアドバイスが受けられ、それなりにいろんなケースを経験することが最も大切だと思われる。
 しかし、現実には、ある病院では、症例が少な過ぎて充分に経験できなかったり、ある病院では、指導者が不足していたりと、問題があっても、事がスムーズの行われていれば、(ドクターの強い要請があっても、医療費が今のように上がらなくて経営的にも苦しい中では)なかなか取り上げてもらえないことが多い。しかし、結果が悪いと、直接それに携わったドクターの責任となることが多い。又、忙し過ぎることで、(当直明けだったりとかの)医師自身のコンディションの悪さで、思わぬ落とし穴に陥ることもある。
そして、最も注目すべき点は、どんなベテランがどんなにいい条件でしても、1例も例外なく、安全に出来ると言うことは、医療では考えられないからである。
 耳たぶをちょっと切って検査する時に、その血が床に落ちて、それを見て倒れてしまった中学生の男の子が(大学病院勤務の時に)いた。予防接種で(私は、幸いにしてショック状態になった経験はないが)、ひどいアナフィラキシーショックになった例や、それで亡くなった例、現実にある。常に検査や治療がパーフェクトに出来ないことを一般の人にどうしても知ってもらいたいと思う。医療に関する限りは、100%の安全性を求める努力が常になされていても、100%に近づることが出来ても、100%安全であることは、無理なことなのである。
 いろんな矛盾した中で、それでもやはり多くの医者は、良かれと思って(患者さんがいい方向に行くようにと思って)検査や治療をしているのだ。
 医療訴訟の問題だけでも、過剰な心配をしなくてもいいことになれば、どんなにいいだろうか。
 第一線で日夜一生懸命に努力されている多くのドクターにとって、医療訴訟の問題は、どうしても避けて通れない問題なのである。
*今の若い先生方をつぶさに観察していると、いろんな手技を直ぐに習得してしまっている感じだ。研修病院を選ぶ場合でも、給料が安くても、勉強がしっかりと出来る所に集まっている。次の内容は、ある若い整形外科医の話。

 初め、骨に(鋼線を)通すのを見て、こんな残酷なこと、自分には、とても出来ない感じで、先輩のを見ていた。それが、しばらくすると、不思議に、出来るんですよ。骨折で来ると、「ごめんね、痛いけど我慢して」なんて言って、時々、方向を間違えて又し直しをしたりして、「ごめんね、今度うまくいくから」なんて言って、やり直すことがある。今は、すごいスピ一ドで、サッサッサッと通してしまっている。麻酔しても効かないんで、急ぐ時は、しないこともあります。骨折で、強引に引っ張っても、初めからうまくつながらなくて、何回か引くこと、結構あります。「ごめんね、痛いね」って言いながら、すごい力で引っ張っている。人間も、ほんと、残酷になれるもんですネ。自分でも驚いています。3カ月で、慣れてしまった。