日本の心・さいき

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アンバランス・・・

 認知症の場合、正常に働いている所と働いていない所がある。母は、自分の異常に気が付いているし、周りも気が付いている。(これは、幸いなことだと思われる。)
 近年、認知症の理解と並行して、アンバランスな脳を持った成人がクローズアップされる様になった。本人に、脳がアンバランスに発達しているとの自覚が全くなく、それが根底にあって、ちょっとしたことで、鬱になったり、ニートになったり、引きこもりになったりしている例がある。(かなりの割合になるらしい・・・?!)
 医学生の時(昭和51年卒)に、小児科の講義で、「微細脳損傷」って疾患を教わった。その詳細な原因は不明で、当時、軽度の発達障害って感じで捉えていた。それが、米国精神医学学会が作成した精神障害の診断基準で、1980年(昭和55年)に、「注意欠陥障害(ADD)」なる言葉が使われ、1987年(昭和61年)には、「ADD」が「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」と言い変えられた。
 「ADHD」とは、「Attention Deficit Hyperactivity Disorder」のことで、日本語では、「注意欠陥・多動性障害」と訳されている。
 「Disorder」を「障害」と訳されてしまったが、本来、これは、「ある行動や日常生活を行う上で多少のハンディがある」って感じの用語だったはずで、それが、「障害」と言う(重い感じに受け取られ)強い言葉で言われた為に、本人がそれを受け入れ難くなると同時に、家族や社会も、偏見めいた感じで、受け止める様になったのではないでしょうか・・・?!
 つまり、発達障害と言うよりも、脳がアンバランスに発達していると言うべき。周りの理解と協力で、社会に充分に適応出来ることも多く、それ以上に、我々凡人と違って(?!)、素晴らしい業績を残す例も多いのだ。
 音楽家のベートーベンやモーツアルト、科学者のエジソンアインシュタインやレオナルド・ダ・ビンチ、画家のピカソやダリなど、天才と言われた人の中には、現実に、発達障害者が多数いる!!更には、日本人で言えば、織田信長、平賀源内、坂本龍馬も。
 現在、世の中で活躍しているスポーツ選手や芸術家、更には、教育者や医師の中にも、そんな目で見れば、いるかな・・・?!
 軽度のADHDでは、例えば、学校の成績がずば抜けて良く、周りが騒ぐと、益々頑張る感じになって、適性やコミュニケーションの問題がなおざりにされてしまう傾向になる。しかし、現在、大人のADHDは、本人がしっかりと自覚し、それなりに周りも対処して行けば、社会に適応できる例が大多数なのだ。
 発達障害には、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、広汎性発達障害(この中には、自閉症アスペルガー症候群などが含まれる)、LD(学習障害)、知的障害(精神発達遅滞)、発達性運動障害などがある。
 2005年には、発達障害者の自立と社会参加を目指す「発達障害支援法」が施行され、2007年には、特別支援教育が学校教育法に盛り込まれ、2008年には、保育所保育指針が40年ぐりに改定された。又、最近、大学でも発達障害のある学生への支援体制を強化する動きが出来ている。
 統計にもよるが、ADHDやLDは、15歳未満の子どもの人口の6〜12%もいる。残念なことに、発達障害を診断して治療できる医師は「児童精神科医」だが、実に少ない。(日本では、欧米と比べて児童精神医学は、30〜40年以上遅れている。)
*参考図書:「発達障害に気づかない大人たち」星野仁彦、祥伝社新書、780円、平成22年発行